人事評価の科学。組織的公正について
人事評価は双方納得するのが肝ですが、なかなか難しいことです。
公平な評価であれば納得感もあるのでしょうが、それぞれ「公平」はきっと違いますよね。
日本のとある企業の調査結果によると、評価に満足しているのは4割程度なのだそうです。なかなかの低さです。
「組織的公正」について。
組織的公正の概念
内容を大別すると以下の2つで構成される。
- 分配的公正
受け取った報酬、分配結果に対して感じる公正性のこと。 - 手続き的公正
分配が決定されるまでのプロセス、手続きについて感じる公正性のこと。
他にも、「相互作業的公正」(上司、部下の間の関わり、コミュニケーションを公正と感じる)、「情報的公正」(情報が適切に開示されていると感じる)などがあるとされる。
最も影響するものは?
上記の大別した2つのうち、1の分配的公正は、同じ評価であっても個々人に捉え方が変わり、皆で合わせていくことはやはり難しいと考えられる。よって、基本的には2の手続き的公正を上げていくのが良いとされる。
つまり、評価プロセスに関与できるようにする、それぞれの関与度をあげるようにすること、それが大事。
手続き的公正をあげるには?
手続き的公正には以下のような条件が必要とされる。
- 評価精度を高める
評価される側の業務をよく知っているものが評価すること、評価軸に偏りがないことなどに配慮する - 仕事自体のプロセス、自律性
仕事のプロセスについて裁量権を認め、進め方自体の自立性を高める。また、自分の得意な仕事など、仕事自体の選択を認める。あるいは、担当範囲について納得感を高める - 評価者と、被評価者の間で十分なコミュニケーションが取られている
仕事内容や、範囲に対する2者間での合意や、必要な援助の確認など - 評価の結果をフィードバックする
どういったことがその評価結果をもたらしたのか、などの開示 - 評価結果に対する申し立てができる
- 手続き自体が正常に働かなくなった場合などの変更ができる
以上の様な条件で、手続的公正は上げていけるが、評価プロセス自体をすぐに変えにくい、という場合もありうる。
その場合は、「相互作業的公正」(コミュニケーションに配慮)、「情報的公正」(適切に情報開示)などの対応を実施することによって、手続きプロセスを真正面から変えなくても手続き的公正を多少は高められるという研究結果もある。
そもそも評価される軸が企業によっても違うので、その反映が必要
上記の公正の観点以外にも、組織の価値観によって、A社とB社では当たり前が違い、評価軸が違うことが考えられる。この評価軸、価値観が評価プロセスに反映されていないと手続きに反映されていないことになり、手続き的公正の感じ方が低くなる、ということになる。
手続き的公正が高ければいいのか?
これについては問題がある場合もあるそうだ。
手続き的公正が高いということは、あらかじめ明確に決められた基準を越えれば確実に約束された報酬がもらえる、ということなので、これを好まないパターンの人がいる場合である。
例えば、リスクをとって、結果としてかなり好成績を収めるような、そういった行動を取る人材。この場合は好成績でも約束された報酬しかもらえない場合もあるし、決まったルールを好まない。
また、予め決められたわかりやすい評価で動くことがそもそも苦痛、退屈と思う人員、いわゆるリスク志向の高い人材はこの様な状況ではなかなか定着しにくい。
よって、新規事業を専門に行う部署や、ベンチャー企業など、リスクの高い環境によくいるタイプの人材についてはこの手続き的公正が高すぎる環境では難しい。
まとめてみて
評価関連として、「公正」について、まとめてみました。
何をもって、評価が公正と言えるのかについても人それぞれ確かに違うなぁと思いました。また、公正、明確なことが誰にとっても絶対に良い、というわけでもないということも目にしたので、思ったよりももう一段複雑な問題なのだな、、と思いました。
ほとんどの人に良さそうな話であっても、探せば、例外というものは見つかるものです。
良さそうだと巷で言われているものも、例外はないものかと肝に銘じておくと、発見があるのかもしれません。